水性ボールペン研究報告
皆さんは日常の筆記用具として何を使っておられるだろうか。鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、日常ワープロを使い慣れており、書くよりもタイピングの方ががずっと速いという方も多いかと思う。私もその一人で、長い文章を手書きしなければならなくなるととたんに憂鬱になるほどである。再利用の用途の広さ、推敲の容易さ、さらに熟練すれば話し言葉とほとんど同じになりうる速度と、疲労度の低さで、タイピングにかなう筆記用具はない、と思っている。
しかし、そんな私にも、旧態依然たる筆記用具を使わなければならない場面は数多く存在する。ちょっとしたメモや、フォーマルな場面以外でも、数式を含む思考過程の記録や、ラフスケッチなど、文章以外のアイデアを書き留める手段としてはまだまだ紙とペンを使わざるを得ない。
大学四年生で研究室に入ってから、こういった記録にボールペンを使い始めるようになった。鉛筆やシャープペンシルと違い、消しゴムで修正ができないボールペンは一見不便である。はじめは先輩に影響されて、実験のログノートなど間違っても消してはいけない記録を取るために使い始めたものだったが、次第にボールペンの書き味、視認性の良さから、普段のノートにもボールペンを使うようになった。不思議なことに、いったん慣れてしまうと、間違えて修正できなくてもそんなに気にはならないものである。それよりも見直したときに読みやすいとか、コピーをとってもかすれたりしないほうがずっと大事なのだ。
ここでいうボールペンとは、いちばん安くてよく使われているアレ(軸が透明のプラスチックで、六角形をしている)ではない。この一〇年ほどで普及したのではないかと思うのだが、水性ボールペンと呼ばれるボールペンの一種である。この水性ボールペン、顔料インクを使って、非常に黒くてはっきりした線を、じつに軽いタッチで書くことができる。軸の中に万年筆のようにインクのタンクがあるのが特徴で、ただ万年筆のようにこのタンクを取り換えたりするようにはできていない。時代が時代なら万年筆を使うところなのだろうが、使い比べてみてメンテナンスの容易さ(なにしろ使い捨てである)も、書き味も、万年筆の優位性はほとんどなくなっているのではないかと思う。一方、普通のボールペンとは、使い道によって住み分けができると思う。水性ボールペンは、特に紙によっては乾くのが遅いという欠点があるし、宅急便の送り状のような転写用紙には水性ボールペンはほとんど使い物にならないからだ(筆圧の問題だろう)。
ノートをとるためにさまざまな水性ボールペンを使っていると、やはり同じ水性ボールペンでも、使いやすいものとそうでないものが存在する。長い前置きだったが、各社から発売されている水性ボールペンの使ってみての感想、優劣をここで論じたいと思う。
- 三菱鉛筆uni-ball eye UB-150。150円。東西を問わず、コンビニでよく売っている水性ボールペンである。旅先などで慌てて買うとたいていこれになる。少し書き味が重い他、キャップの下の、書くときにつまむところが滑りやすい気がする。入手の容易さは評価できるが、総合性能では平凡。☆☆☆
- 三菱鉛筆uni-ball 5 100円。青い軸だが、黒ボールペンだ。母校の研究室ではこれが最もよく使われていた。というのも、用度に発注をまかせると自動的にこれになったからだ。書き味、黒さはまず及第点であるが、やや線が細すぎ、かつ、ペン先が紙を引っ掛けてにじみの原因を作りやすい。☆☆☆☆
- 三菱鉛筆uni-ball 5 100円。こちらは黒い軸のタイプ。型番が同じであるにもかかわらず、青軸のものよりもやや太く、その分にじみやすい。また、ペン軸の普段キャップで隠れている部分が、なぜか滑りやすい表面をしており、使い勝手が良くない。何となく貧乏臭いデザインである。☆☆☆
- 三菱鉛筆uni-ball Signo 100円。見た目は普通の事務用ボールペンであるが、顔料インクの入った軸が太いのでそれとわかる。筆記にやや力が要り、書き味は普通のボールペンよりも少し軽い程度だが、筆跡は黒くて見やすい。☆☆☆
- ペンテルHybrid K105 100円。上のuni-ball Signoと似たような方向性の品。使い勝手は大差ない。線が太く、小さな字を書けないのは問題である。☆☆
- パイロットV corn。100円。これがいいのだ。太さ、書き味、黒さ、ペンの耐久性といった要素を考え合わせて、私のベストである。しかし洗濯機にかけると使えなくなる。当たり前だね。☆☆☆☆☆
- パイロットV corn c 150円。上のV cornのキャップが透明になったもの。実のところ、それ以外になにが変わったのかよくわからない。また50パーセントも高い。ひょっとして上の値上げ版ということなのか。「耐水性」という表記が付け加わっているが、封筒の表書きに水性ボールペンを使おうとは思わないので、別にどうでもいいことでもある。コストパフォーマンスは、したがって大きく後退した。☆☆☆
- パイロットVペン 160円。先が万年筆状になっているので、正しくは水性ボールペンに分類されない。実は書き味は悪くない。万年筆同様、よくペン先がトラブって、そうなるともう捨てるしかない。☆☆
- パイロットHi-TechpointV5C 150円。書き味は優れているが、先が細く飛び出ており、筆圧をかけるのが不安になる。ハードな使い方には向かないようだ。☆☆
- トンボMONO BALL 100円。研究室のイチ押し。液が漏れるからか、使用前にはペン先にロウがかぶせてある。この液の漏れやすさが最大のネックで、普通に使用していても先の方から漏れてきて手を汚すことがある。書き味はV cornに次いで良い。細かいことを言えば、表面の印刷が、長いこと使っていると剥がれてきて見苦しい。☆☆☆☆
- ゼブラ0.5 Jell Work 150円。水性では無いようだ。書き味は軽いが、あまりに薄く、かつかすれやすい。☆☆☆
なんか水性ボールペン以外のものも多いが、いまのところはこれだけである。
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