ドミニオン

 大阪府警に装備された警察用強化装甲服。大阪府警は実験部隊として三個小隊分、二七体(小隊当たり常用八体補用一体)の「ドミニオン」を九七年から配備しており、市街地における訓練も行われていた。

 大西科学によって昭和五〇年代から研究が進められていた半自立式・倍力機構付き装甲服は、八八年に陸上自衛隊(および海上自衛隊の一部)における防衛用装備「八八式強化装甲服」として制式採用されたことで結実した。大西科学では、八八式の生産および整備をM重工に移管し、防衛用に限ったライセンス生産を開始させたが、大西科学では同フレームを用いた民生用、警察用装備の開発を続け、翌年、兵庫県警に武装および装甲の簡易化、倍力機構のリミッターの追加などのマイナーチェンジを行った八九年型警察用強化装甲服、通称「ドミニオン」の試験配備開始へとこぎつけたものである。

 折から、貿易自由化の波を受けた、神戸の「自由港宣言」の副産物とも言える、神戸港における麻薬絡みの犯罪の増加、凶悪化を受けて、「ドミニオン」部隊は積極的に取り締まりに参加し、数々の武勲を上げた。この天使の名が付けられた鋼鉄の戦士「ドミニオン」の現場における評価は非常に高く、一般警官にとっては無敵の神の軍隊として、そして犯罪者にとっては法律を体現する復讐の天使として、大いに頼られ、恐れられることになったのである。この使用実績を受けて九七年には大阪府警、奈良県警、広島県警の三府県警でも採用が決定、機動隊を中心とした配備が開始されていた。

 なお「ドミニオン」はもともと兵庫県警内部で広まった愛称(コードネーム)であり、他の府県警では、公式にはそれぞれ別の符丁を用いて呼称されているが、兵庫県警が犯罪抑止効果と警察官志望者の増加を狙って「ドミニオン」部隊を広く宣伝したこと、また特に九五年の阪神大震災時の災害救助、復旧活動でその活躍が一般に膾炙したものとなったことで、ほぼ全国的に、八九年型警察用強化装甲服のニックネームとして定着したものである。なお、九九年現在、自衛隊に新装備として採用された「九八式強化装甲服」の警察型開発生産計画の大西科学開発部内名称として「セラフ」が定着しているのも、この「ドミニオン」の成功を受けたものであるが、現在のところ「セラフ」は実戦配備には至っていない。


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