Q1 スピードマンはどうして大阪弁を話していないのですか。(埼玉県 ジャッキーさん)
A1 劇中では、ほとんどすべての登場人物が標準語を話していますが、これは、演出の便宜上そうなっているとお考え下さい。小説の中で英語やフランス語、ときには「宇宙語」や「エルフ語」で話しているにも関わらず日本語で書かれている場合がありますが、スピードマンも、本当はべたべたの大阪弁をしゃべっているところを、標準語に置き換えて書いてあるのだ、と。ただし、変身後のスピードマンは意識して標準語(だと各務が思っている言葉)で話していますし、宇宙人ポレポレは完璧な標準語をしゃべっています。また、バグノイドは関西のイントネーションの標準語に「バグ」という接尾辞を適当につけてしゃべる、という複雑なものです。物語を梗概という形で書くという性質上、これらをある程度省略を行った上で記載しております。事情を御賢察の上、御了承下されば幸いです。
Q2 スピードマンの決め台詞の「〜と言っても過言ではない。じゃっ。」の「じゃっ」は「それではまた」の意味の挨拶なのか、ウルトラマンの「シュワッ」みたいな掛け声なのか、気になって夜も眠れず、朝寝坊してしまいます。いったいどちらなんでしょうか。それとも、その他のヒミツの合図なんでしょうか。(いをりさん)
A2 いいところに気づかれました。実は、これには、二通りの意味が同時に込められているのです。ダブルミーニングというやつです。まずは「それではこの辺りで失礼いたします」の意味。これは日常よく使いますね。「言い忘れてたけど、私、あなたのこと、嫌いだから。もう電話しないでね。じゃ」という時の「じゃ」です。
そして、もう一つが、実は一種の符丁なのです。意味は「前面の敵、完全沈黙。任務完了。帰投する」です。ベトナム戦争を扱った映画などを原語で聞いていると、攻撃ヘリが出撃から帰還するときによく「Lonewolf, Sweethome. Jah, over.(ローンウルフから基地へ。任務完了。帰還する。以上)」と言っているのが聞き取れます。嘘です。
Q3 「その真っ赤な血潮には宇宙人の超科学が流れているのだ」ということは、ナノマシンは血液に含まれているので各務氏は献血や輸血はできないのでしょうか?(ゆうくんさん)
A3 実は、この世界では血液中のナノマシンはかなり普遍的な存在です。現実世界での心臓のペースメーカーのような感覚で、非常に限られた人に限ってですが医療用として実用化されており、従って「ナノマシン持ち」である各務はそんなに特殊な存在でもありません。しかし「ナノマシン持ち」は問診と簡単な検査によってそれと分かった場合、献血を断られる場合が多いです(ナノマシンを血液と一緒に取り去ることで献血者の健康上の被害が懸念されるうえに、フィルタリングに手間がかかるため)。というわけで、各務はこれまで一度も献血をしたことはありません。特殊なナノマシンであることが明るみに出てしまうからです。同様の理由で、健康診断における血液検査や尿検査は各務にとって鬼門であるはずですが、どうにかしてごまかしているのでしょう。娘のを持っていったり。
もし、各務が直接自分の血液を誰かに輸血したら、輸血された人がスピードマンへの変身能力を持つかというとそうではありません。ポレポレが与えたナノマシン群はあまりにも各務の生理に適合するように設計されているので、たいていの場合、血液型の異なる人に輸血したときのような、拒否反応を引き起こしてしまうのです。
各務が出血多量の窮地に陥った場合は、輸血で命を持たせることは多分できるのですが、ナノマシンは補われないので、スピードマンに変身したり、いろいろな特殊能力を発揮することはできなくなるでしょう。なお、ポレポレが各務に移植したナノマシン群は、人類が作ったものよりも遥かに優れていて、人工透析の必要がないうえに、自己修復・増殖能力を持っており、各務の体内で自分たちを適正な数に保っています。輸血や暴飲暴食によってナノマシン濃度が落ちても、ゆっくりではありますが、いずれ回復するのです。
Q4 各務剛志が肉体改造を受けたのは、彼がまだ幼い頃だったようですが、幼いスピードマンの活躍を知ることはできないのでしょうか。(屁理屈太郎さん)
A4 各務剛志がポレポレに誘拐され、体内にナノマシンを植え付けられたのは彼が七歳のとき、昭和三七年のことです。しかし、各務の肉体がはじめて変身に耐えられるだけの体力を得たのは、これよりずっと遅く、十七歳、昭和四七年ごろになります。だから、幼い各務はスピードマンに変身したことはありません。ナノマシンは、単なるテレメトリ・システムとして用いられていました。
異星人ポレポレとしては、各務が変身可能になった年齢からスピードマンの訓練を本格的に開始して、五年ほど経って各務が十分経験を積んだ時にちょうど獣人帝國バグーとの戦いが生じると計算していました。つまり、獣人帝國バグーの活動開始を昭和五二年くらいと考えていたわけです。しかし、実際の侵略は、それよりも二二年も遅れ、1999年になってしまいました。
訓練は人知れず続けられていましたし、この歳までに各務が訓練以外の目的でスピードマンの能力を使ったことがないのかというと、実はあるのですが、そのいくつかは物語のクライマックスで明かされる予定なので、今は秘密にさせておいて下さい。
Q5 異星数字はゼロが全ビットオフ(真っ暗)で表されるわけですが、不便ではないのでしょうか。(いをりさんほか)
A5 異星数字は、ご指摘の通り、そのまま紙に筆記すると空位のゼロを表記する手段がなく、はなはだ不便です。デジタル表示という方法を抜きにしては、この表記法を理解することはできません。
これに関しては、異星数字の発達過程に関する、ちょっとした特殊な状況が背景にあります。くじら座タウ星第三惑星の環境、技術発展史、文化と関わりがあるのですが、異星数字は、まず漢数字のような、明確なゼロがない八進法の数字として発明され、後に地球と同じようにゼロが発見され、現在のアラビア数字によるものと同じような表記法に発展しました。右から左へ、数字の価値が八倍になってゆくという形式まで地球のものと(八と十の基数を除いて)全く同じです。しかし、ここから、異星数字はややいびつな発展を遂げました。LED、液晶またはそれに類似した表示装置の発明のときに、なんらかの社会的技術的要因によってこの装置が著しく高価であり、1ビットでもこの表示素子の数を減らすことが至上命題となったのです。そこでデジタル表示用に新たに発明されたのが現在の異星数字です。ご覧のように、下の棒(_)が一、右の斜線(\)が二、左の斜線(/)が四を表すという、非常に論理的ではありますが、冗長性が低い(故障に対して弱い)、ゼロを認識しにくいという二つの大きな欠陥が存在するものとなっています。
しかしながら、異星科学技術の発展過程においてこの装置の価格に対する圧力がかなりの長期間にわたって(おそらく二世代ほども)続いたこと、八進法というもともとの基数が非常にコンピューターと親和性が高く、二進法の内部表現をそのまま表示に直結できるという構造が甚だしく表示装置の内部構造の簡略化に役に立ったなどの利点が、この不便な記数法を定着させることになりました。現在でも、必要があって紙に数字を記す必要がある場合には、異星人は別の明確なゼロと十分な冗長性を持った筆記用数字を、現在の日本における漢数字のような意識で、使用することがありますが、高解像度モニターが一般的になって十分な期間が経過したにもかかわらず、異星数字はいまだに主要な表記法として用いられているのです。
Q6 「超光速流」スピードマンと将棋の「光速流」谷川浩司棋聖にはなにか関係があるのでしょうか。谷川棋聖も関西(神戸)の方ですから気になって夜も眠れません。(りんどんさん)
A6 いいかげんな題名を付けてしまって申し訳ありません。「光速流」という言葉が将棋にあるということは知っていたのですが、詳しいことは何も知りません。本当のところ、この題名は、語呂と英語題名「SPEEDMAN the Super-light Speed Stream」の頭文字をとると「SSSS」になる(ちょっと苦しいですが)、ということ以外大して意味はないのです。強いて言えば、谷甲州というSF作家の書いた「航空宇宙軍史」というシリーズに出てくる超光速航行を可能とするガジェットと、それから「神聖モテモテ王国」というマンガに「超光速流デスラー戦法」という(これは将棋の言葉に直接関係する)ギャグがあった、という辺りからもらってきたものです。私の浅学非才ゆえに、各務が将棋をするシーンは出てきそうにありません。ごめんなさい。
なお、ちょくちょくこのタイトルが「超高速」と間違えられているらしいということが最近の調査でわかりました。「Super-high Speed Stream」です。なんだか、語呂に変化がない上に、こっちのほうがストーリーとの整合性の点でベターかもという気がしないでもないです。