セルダン危機

 アイザック・アシモフのSFシリーズ「銀河帝国の興亡(ファウンデーション)」に登場する言葉。作品中で、人類は銀河中に植民し、巨大な帝国によって統治されている。その帝国に生まれた天才的な数学者であるハリ・セルダンは、人類を個々の人格を無視できるほど多数の集合体として(あたかも、統計力学のごとく)扱うことによって歴史の大きな流れを厳密に数学的に扱うことができる、ということを発見し、これを心理歴史学と名付けた。セルダンは、この心理歴史学を用いて帝国の滅亡を予見し、あまりにも大きな流れの結果ゆえに避けきれない帝国の滅亡ではなく、その先の無政府状態の悲劇を避け、可能なかぎり速やかな第二帝国の勃興を促すべく、「ファウンデーション」を設立する。「セルダン危機」とは、このセルダンが設定した第二帝国への流れのうち、避けられないいくつかの歴史の分岐点を指す。「セルダン危機」を、セルダンが予期した通りに(それは最も確率の高い道、ということなのだが)、乗りきってこそ、セルダンの立てた計画は成就されるのである。


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