次回作について

 二千年二月某日、大西科学エンタテイメント大阪本社二階大会議室「白虎の間」において、ミカグラ一二八用大作RPGとして大成功をおさめた「ワンダリング・ガイズ」の続篇「ワンダリング・ガイズ2〜幻想のモラトリアム〜」の制作発表会が、関係者数百人を集め行われた。大西科学エンタテイメント社長の大西財六氏による挨拶のあと、有名なゲーム作家であり、本作品の開発主任である榎戸タケル氏の「熱心なファンの声によって続篇の制作にとりかかることになった、たいへん嬉しいことである。夏の発売を目指して開発中である」とのコメントがビデオで上映された。氏は現在大西科学エンタテイメント環島研究所において本作の開発に取りかかっているため、やむなく今回の発表会を欠席することになったとのことである。冬の夜の気温は零下三〇度を下回ることさえあるという環島での氏の近況が気になるところであるが、ビデオでの姿を見るかぎり、血色も良くいたって健康そうで一安心である。ただ、少し頬の辺りが不自然に角張っていおり髪の毛もテクスチャで描いたっぽい印象を受けたが、これも氏一流のパフォーマンスの一部かもしれない。

 ともあれ、一般のファンにとってみれば、氏の健康よりもかの「ワンガイ」の続篇と聞けば、内容が気になってならないところだろう。発表会の途中で榎戸夫人である葉子さんが「あの人を返して」などとわけのわからないことをわめきながら乱入して警備員にとりおさえられるという一幕もあったが、発表会は大筋において滞りなく行われ、関係者の歓迎の拍手で迎えられた。ここで、発表された「ワンガイ2」の内容、主にゲームシステムの前作からの変更点について、レポートを行いたい。

●新職業、スキルの追加、改良
 前作において世界のリアリティを増す上で大きな功績があった「職業」は何と二〇四八もの多数に増加(ただし「兼業農家」などの複合職を含む)した。またキャラクタに立体感を与える「スキル(キャラクターの持つ、特殊能力)」が細分化され、強化された。たとえば前作にあった「背中を掻く」スキルが「自分の背中を掻く」と「他人の背中を掻く」の二つに分類しなおされた。従来は「背中を掻く」さえあれば、自分が痒いときも他のパーティメンバーが痒いときも能力を発揮することができたが、これからは、背中に手を回して自分で掻くことができる身体の柔軟性と、「もうちょっと右下」などという要求に的確に応える能力は別のものとして扱われるわけである。これらは実世界では当然とは言え、ゲームでは省かれることが多かったスキルである。
 また、各スキルの取得状況についても「スキルがある」「ない」の二通りしかなかった前作と異なり「超スゴイ」から「超ニガテ」までの五段階で表される。たとえば「さんぽ」スキルが「超スゴイ」の場合、一日中でもそのあたりをうろうろしていられるが、「超ニガテ」の場合三分も歩くといらいらしてくるというふうに、ある意味でキャラクターの性格づけにまで密接にかかわってくるパラメータとなるのである。このスキルシステムを用いてどのような物語が描かれるのか、期待は大きい。

●新戦闘システムの採用
 これ(写真)が「ワンガイ2」の目玉となる新戦闘システムである。「ワンガイ1」では、シナリオ中で発生するモンスターとの戦闘を解決するために、通常のコントローラーを使ったコマンド入力方式の戦闘システムを採用していた。これは「各キャラクターの行動を決定、コマンドを入力」→「素早さ数値の高い順に攻撃開始」→「すべてのキャラクターの行動が終了」→「またコマンド入力へ」という、いわば静的な流れで行われるものであったが、新しい「2」においては、これを廃止、完全にリアルタイムでの戦闘が採用される。プレイヤーは画面内に現れた敵モンスターに対して、実際に「殴る」「蹴る」「武器を使用する」「悪口を言う」などの手段で攻撃を加えることになる。このシステムの実現には、手足に取り付けて使用する専用コントローラー「ミカグラ一二八モーションキャプ太郎」を使うことになるが、3Dディスプレイ装置と相まって非常にリアルな操作感覚を実現している。なお、もちろんリアルバトルシステムとはいっても、相手からの攻撃がプレイヤーにフィードバックされることはない。ただ、あまりにも仮想現実体験が強烈なため、心的な要因による内出血の発生(「聖痕現象」などと呼ばれることがある)が発生することがある、とのことであった。この発表を行った大西社長は笑っていたので、たぶん冗談なんだろうとは思う。

●シナリオ選択システムの改良
 「ワンガイ1」では広大なゲーム世界の広がりに対する賛辞とともに「一回のプレイでは全部のシナリオが見られない」という不満が寄せられていた。確かに年間平均二十本以上という、数多くのRPGが発売されている昨今、一つのゲームを繰り返しプレイできるだけの時間をとれる人はそう多くない。そこで「ワンガイ2」では便利なセーブ&リトライシステムを採用した。これは、今までたどってきたシナリオを中断し、まだ見ていないシナリオを以前セーブした時点からやりなおすことができる、というもの。具体的には、あらかじめセーブしたところからいつでもやりなおすことができる。プレイヤーの欲求に応えた見事なシステムであると言えるだろう。

●アイテム購入方式の変更
 ネットワークに接続された「ミカグラ一二八」でゲームを楽しんでいる場合、インターネットを通じて「大西科学エンタテイメント・ランダムアクセス(ウェブ上に開設されている、大西科学エンタテイメント社の通信販売サイト)」に接続され、ゲーム中での買い物を実際に行うことができるようになった。キャラクター作成時にあらかじめクレジットカード番号を入力しておくと、ゲーム中で購入した「ロングソード+1」「4ドアセダン」といった商品が実際に家に届く、という。また、ゲーム中で発見したレアアイテムなどの競売も同じこの「OKERA」において行われる。開発中の画面では「武器屋」などの演出は前作と変わらず、通信販売サイトであることがちょっと目にはわからない場合がある。ロールプレイングゲームを遊んでいてゲーム内で衝動買いしてしまうことはよくあるが、このゲームでは現実に自分の口座からアイテム代が差し引かれてしまうリアルさを備えているわけだ。調子に乗って自分のお小遣いを使い果たしてしまわないように注意したいものである。

●パーティアタック
 「ワンガイ2」では、オンライン接続を行うことで、ゲーム中に鍛えたキャラクターを他人が育てたキャラクター達と戦わせることができる。コマンド入力式の「ワンガイ1」でも同じ機能は別売りの「ワンダリングガイズ・ネットワークアディション」を使用することで利用できていたが、今回の作品ではリアルバトルシステムのため、さらに個人の能力が生かせる戦いが可能になっているとのことである。ただし、戦闘の勝敗によってアイテムを得たり失ったりする「カツアゲ機能」は、ユーザー層である小中学生の教育に悪影響を及ぼす可能性があるため、今回は採用を見送られたことが正式に発表された。「そういうことはオンラインではなく実生活で、ミカグラ一二八とは関係ないところでして、あ、むにゃむにゃ、行っていいことかどうかを判断して欲しい」とは、大西社長のコメントである。

●パーティメンバー相性診断機能
 ワンガイ1において「パーティ(冒険の仲間)の人間関係が最も難しい」と不満が寄せられていた「パーティ編成」における人間関係の把握のために「虫占い」が追加され、プレイアビリティ(遊びやすさ)が大きく向上した。これは、キャラクターの生年月日名前出身地血液型その他のデータを入力することで決定される各キャラクターの性格、キャラクター同士の相性を、一〇種類の昆虫に例えることで明快に表示するもので、これによって誰にでも簡単に理想のパーティを作ることができる、という。なお「虫占い」で登場する虫は、虫の王様カブトムシ、永遠のサブキャラクターのクワガタ、容姿を気にするチョウ、生命力にあふれたゴキブリ、病原菌を媒介するハエ、水中ならお任せのタガメ、後ろ足が器用なフンコロガシ、実は昆虫ではないクモ、大西が大嫌いなイモムシ、なぜか名前だけはよく聞く気がするヤンバルテナガコガネ、である。

◎以上、かけあしであったが、発表会において明らかになったゲームシステムをなぞってみた。シナリオがどういった構成になるのか、前作とのかかわりはどうなっているのか、エンディングで壮絶な死を遂げたボスキャラクター「梅田の魔王」の復活はあるのかなどの興味は尽きないが、今回の発表ではこれに関しては謎のままとされている。また、大西科学エンタテイメント社では、夏の発売に向けて、現在もまだ本格的な開発の途中であり、ここに掲載した機能についても内容の変更や、とりあえず未実装で発売してサービスパックで対応、といったかたちで変更が加えられる可能性がある。本サイトでは、ワンガイ2について追跡を行い、新しい情報がありしだい随時報道してゆく予定である。ゲームフリーク諸君、ご期待いただきたい。


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