ネットエンジェル(中篇)

●総力特集『ネットエンジェル《パパママベビー》』の育て方
目次
○猫でもわかるネット生命/「パパママベビー」って何だ?「エンジェル」ってどういうもの?…2ページ
○誌上徹底攻略・二ヶ月までのエンジェル/首がすわるまで……………………………………………4ページ
○エンジェルの住む世界/目指せデビュー「エレホン公園」サポート万全「エレホン病院」……10ページ
○かわいいエンジェルをさずかるには/ずばり、重要なのはこの遺伝子だ!………………………14ページ
○「パパママ」質問箱/パートナーとの役割分担は?こんなときどうする?………………………16ページ
○パートナーをさがそう/こんなにある「パパママ」コミュニティサイト…………………………18ページ
○開発者インタビュー/「子育てはタイヘンだけど、楽しい仕事」…………………………………19ページ
○先輩パパママ投稿コーナー/エンジェル五〇人大集合………………………………………………20ページ

●FAQ
Q22.私のエンジェルはとても気難しく、ちっとも笑ってくれません。友達のエンジェルと全然違います。どうしてこんなに違うのですか?陽気なエンジェルに育てるには?
A22.エンジェルは、ゲームスタート時に入力いただくプレイヤーのさまざまな個人情報、顔写真、遺伝情報から算出された、プレイヤーたちの性質を受け継いだ存在です。こうした複雑な初期パラメータの組み合わせから、現実の子供がそうであるように、さまざまな性格のエンジェルが誕生します。他人との違い、それがエンジェルなのです。あなただけのエンジェルを大切に、がんばって育てて下さい。

●<ネットゲーム>「授業より赤ん坊」禁止の学校も
 大西科学エンタテイメント(OKE)が三月にサービス開始したゲーム『パパママベビー』が波紋を呼んでいる。『パパママベビー』は「エレホン」と名付けられた仮想世界に生活する子供を育てるゲームで、携帯電話等を利用して外出先からでも「世話」ができるのが大きな特徴。しかし、プレイヤーが低年齢層に広がるにつれ、この携帯電話を用いた「世話」が大きな問題となっている。
 ゲーム中の子育てを円滑に進めるためには、授乳やオムツ替えを要求する子供の世話を昼夜問わず行わなければならない。都内のある高校では、授業中の携帯電話の使用を禁止しているが、今年四月ごろから隠れて「授乳」を行う生徒が続出、六月になって『パパママベビー』禁止が通達された。一部の生徒からは、ゲーム上の子供を放置できず「子供が死んだらどうするのか」と不満の声も上がっている。同校の校長は、子育てを忠実に再現したゲーム『パパママベビー』に一定の教育効果があることを認めながらも「学生の本分を見失うことなく、授業中は勉強に集中すべきだ」と語っている。

●未来のパートナーはこうして選べ?パパママベビーに群がる女性たち
 合コンなどの場面で、突然携帯電話を取り出した参加者が、しばらくがちゃがちゃやっていたかと思うと、画面に向かってにっこりとほほえむ。最近、そういう場面をよく見かけるようになった。この「病」に取り付かれているのは多くは女性だが、男性も珍しくない。電話のスクリーンを覗き込むと、そこにはすやすやと眠る赤ん坊。これがネットゲーム「パパママベビー」だ。
(略)
 しかし問題はそれにとどまらない。この「不自由さ」が、現実の子育ての適性判断に、ある程度役に立つと思われているからだ。都内の二十代女性百人に行った本紙緊急アンケートの結果も、五八パーセントの女性が「エンジェルの積極的な世話を行わない男性と子供を育てるのは不安がある」としている。都内の大手商社に勤めるOL(二六)は「パソコンにばかり向かっている男性には魅力を感じなかったけど、パパママベビーは別」と語る。
 現実の子作りの前に「パパママベビー」で適性を判断され、それが結婚のパートナー選びにも影響してしまう。そんな時代がやってこようとしているのかもしれない。

●FAQ
Q37.仕事が忙しくてエンジェルの世話ができません。どうすればよいのでしょう。
A37.「パパママベビー」は、子育てにともなうさまざまな不自由をシミュレートし、それが大きな喜びへと結実する瞬間を味わっていただくためのゲームです。プレイヤーが二人必要であるように、時間が自由になるパートナーとの共同プレイをお勧めいたしますが、基本的には忙しすぎる人には「パパママベビー」は向きません。責任を持ってエンジェルを育ててください。

●<パパママベビー>ネット上の赤ん坊を放置したとして女性が男性を訴える
 参加者の加熱が問題となっている大西科学エンタテイメント(OKE)のネットゲーム『パパママベビー』において、参加者の女性が《エンジェル》を死なせたとして共同参加者の男性を訴えた。訴えを起こしたのは都内の女性で、訴えによると男性とはインターネット上の掲示板で知り合い、共同で『パパママベビー』に参加したが、今年八月、男性が定められた世話を怠り《エンジェル》を死亡させた。女性は、男性が共同で《エンジェル》の世話をするという約束に違反し、結果として《エンジェル》を失ったとして、ゲーム参加料と慰謝料の支払いを求めている。男性は、最初の数日間をのぞきほとんどゲームに参加しなかったという。
《エンジェル》は同ゲーム上でサーバ上に構築される仮想的な存在で、プレイヤーに世話をされる「赤ちゃん」として設定させる。この《エンジェル》の世話をめぐっては、社会活動に支障をきたすなどの問題点が指摘されており、今後のネットゲームのありかたについて論議を呼びそうだ。

●<パパママベビー問題>首相談話「現実の子育てをおろそかにするのは望ましくない」
 ネットワーク上に置かれたサーバに存在する「エンジェル」を育てるゲームについて、二五日、記者団の質問を受けた総理は、「いろいろ問題はあるがネットワーク上のことであり、緊急に対処すべき事態ではない」とした上で「ただ、少子化が問題になっている折でもあり、現実の子育てをおろそかにし、仮想的な赤ん坊に注力するようでは望ましくない」と述べ、『パパママベビー』への憂慮を表明した。

●(速報)<パパママベビー>OKEがネット上の「保育園」を設立
 ネットゲーム「パパママベビー」を運営する大西科学エンタテイメント(OKE)は12日、利用者の要望にこたえ、「パパママベビー」内の仮想世界「エレホン」において保育園サービスの提供を開始すると発表した。「パパママベビー」はエンジェルと呼ばれる仮想の赤ちゃんを、ネットワーク上で育てるゲームで、授業中等に携帯電話を通じて世話を始める中高生が社会問題となっている。「エレホン第一保育園」は、この批判にこたえ、授業や仕事のある時間帯にプレイヤーに代わって「エンジェル」の世話を行うサービス。OKEではこのサービスを月間数百円程度の追加料金で提供したい、としている。


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