なぜ「おむつゴミ」は無料でなければならないか

 大西と申します。このたび新聞報道などにより、これまで無料だった市のゴミ回収が、来年度より有料化されるという情報に接し、これに関して市民としてご意見を申し上げたく、コメントを差し上げます。はじめに、私の主張を簡潔に述べますならば、
「燃えるゴミ有料化は結構、しかし、紙おむつのゴミ(おむつゴミ)は無料のまま据え置いて欲しい」
以上です。来年度より開始されるゴミ回収有料化においては、45リットルごみ袋の回収費用として30円程度を予定しているとのことですが(これは新聞報道による情報ですが)、紙おむつに関してはそれを無料してほしいというものです。

 本件に関しましては、先日も、より簡略な内容でメールにて問合せをさせていただいたものですが、実は、これに対しては「考えておりません」という、とてつもなくすげない返事をいただきまして、これは、なんと申しますか、いかがなものかと。善良な市民にして納税者、市の次世代育成を担う子育ての主体となって毎日がんばっているお父さんに対する態度としてそれでよいのかと、正直申し上げまして少々憤慨いたしまして、あかんこんなもんラチがあかん、ええから上の者呼んで来い、できたら市長呼んで来い、なんじゃお前ガタガタぬかすな関西人なめとったらいてまうぞ、という勢いで、再度のコメントを差し上げるものです。大丈夫ほとんど勢いだけですから平気です。根は平和主義者の雑文書きです。

 上記だけでは前の問合せメールと同じで、「考えてませんってば何言ってんですかあなた」的な回答が返って来ることが予想されますので、以下、若干補足いたします。なぜ、おむつゴミは無料回収でなければならないのでしょうか。

 まず、おむつゴミには、ほかにない特徴があります。このへんは、子育てをしたことがない人、子育てをしたとしてもそれが昔だった人、子育てを現在やっていてもすごくまじめにやっていて紙おむつを使ってない人にはなかなかわからないと思うのですが、おむつゴミは他のゴミ、生ゴミだとか、紙などの普通の燃えるゴミだとか、落ち葉枝葉建築廃材等と異なり、厄介な特徴があるのです。

1.庭に埋めたり、生ゴミ処理機を使うなどして、家庭での減量をすることができない。
2.悪臭を放つため、長時間家に置いておきたくない(ゴミの回収日ごとに毎回捨てたい)。
3.子育てにはどうしても必要なものなので、使用量を減らすことができない。

1はもっともだとして、ほかは、まあ我慢すりゃよかっぺ、と皆様はイバラギ弁で考えることでしょうが、あ、いま口が滑りましたごめんなさい。ええと、おむつは、子育てのダークな一面です。私自身はわりあい平気ですが、子供のお尻を拭けない男親というのを、私は何人も知っています。こういう男親を抱える家庭というのは、たぶんしかたがないのでお母さんが一人でおむつと戦っているはずです。本当にこれは戦いというべきもので、使い捨てで楽チンな紙おむつですらこうなのですから、布おむつのひとはどんなに血みどろの戦いを繰り広げていることでしょうか。だってあれを洗うんですぞ。とんでもないことですぞ。

 ええと、まあその、ちょっと前まではそれしかなかったと言われてしまうとそのとおりですが、だから、本当の子育て支援というのは「子育てにまつわる厄介ごとを子育てをしている人の身の上から取り除いてやること」だと思うのです。ホントに。要するに、何がいいたいかといいますと「『ゴミの排出量を各市民が減量する』という目的で回収を有料化する」という主張に、おむつはそぐわない、ということです。どうしたって減らせないですし、毎回出したいゴミなのですから、出すしかないのです。ゴミは減らないのです。わかったかこのイバラ、あ、いや、えーと、茨城県にお住まいの方々。

 一生懸命文章を綴ってひたすら墓穴を掘り進んでいるだけのような気がしますが、次行きます。「無料化すると、おむつゴミの街への散乱を避けられる」です。上のように、我が子のものさえおむつゴミは嫌なものなので、それが街に捨てられるとしたら、ぞっとします。ぞっとするのですが、世の中というものは悲しいかなそういうもので、一般に、ごみ回収を有料化すると、出すのは懐から手を出すのも嫌という人はじぶんちのゴミをよそに捨てに行きます。ターゲットは公園とか、スーパーやコンビニ、サービスエリアやなにかのゴミ箱です。これはもう、いかに禁止しようと監視しようとそういう人は絶対いるにきまっていてどうしようもありません。街からゴミ箱を撤去したら道に捨てるに決まってます。決まっているのですが、その中でも特に嫌われることがわかっているおむつゴミだけは、無料回収によって減らすことができると思うのです。喫煙所を作ってそこでタバコを吸ってもらうとか、そういう発想です。だって、社会全体で子育てをしようという、あなた、仮にもそういう時期に「おむつウゼえ」とみんなが思うようになったらおしまいでしょう。そういう意味で、喫煙所は設けてやってください。おむつは、無料で回収してください。

 さらに。ここだけの話ですがダンナ、おむつ回収無料というのは、市にとって非常におトクな取り引きなのです。まあ聞いてくださいよダンナ。

 えー、旅館やらホテルに泊まると、いろんなオマケがついてきますわな。石鹸、シャンプー、歯ブラシ、ちっちゃなチューブに入った歯磨き粉、お茶のパック、小さなお菓子。冷蔵庫にサービスのミネラルウォーターが入っていたり、新聞が無料だったり、旅館ならタオルもくれます。スリッパも、ちょいともらって帰っていい場合があるらしい。誠に行き届いたサービスですが、なんでこんなことをするのでありましょうな。こういうものを全廃して、そのぶん宿泊費のほうで、こう、勉強させていただくと、そういうふうにはならんものでしょうか。

 違うんですな。我々はホテルとはそういうところだと思っておりますから、泊まって、ユカタが置いてないとちょいと怒ります。考えてみれば上のいろいろなど、値段にすれば合計千円になったらびっくり仰天、というものです。それが、いちいちお金を出してフロントで買わないといかんということになると、妙にいやらしいと。我々は、宿泊費でがっつり持ってゆかれるのはしかたがないと思っとるわけですが、それに対して、何かのついでのようにちびりちびり、数百円ずつ懐からお金が出て行くというのは、これがまた面倒さとあいまってムショウに腹が立つと、そういうものなんじゃないかと思うんですな。むしろ、こういうのこそがリアルなコスト意識というものやないかと、そういうわけです。

 なんでこんな口調なのかわかりませんが、えーと、つまりそういうわけで、おむつゴミ回収が有料だと、この市はなんと子育てに冷たい市だ、となるわけです。一方で市民税をきっちり納めていても、はたまたもう一方で育児手当をけっこう手厚くもらっていても、そんなものは関係ありません。これらは源泉徴収票なり通帳の上の数字に過ぎないのに対して、日常スーパーなりコンビニなりで買う「有料ゴミ袋」は生活者にとっての現実なのです。市民は、はい三十円はい三十円ちゃりんちゃりんちゃりんにだんだん腹を立て、しまいには市役所のゴミ箱におむつを捨てに来るようになるでしょう。いや、脅迫じゃないです。ものの例えです。

 ところがおっとどっこい、おむつゴミ回収を無料化すると、それはもう、毎日が、いや毎ゴミ回収日が、子育て中の世代にとってハッピーウッキーパラダイスになります。そこまでのことはないかもしれませんが、考えてもご覧なし、日常、お隣が有料でゴミを捨てているのに対してウチのゴミは、まあおむつだけですが、無料で捨てられる、普通のゴミ袋でぽんと捨ててオッケー、極端な話スーパーの袋でオッケーと。これはキます。すっげえ嬉しいでス。間違いなく、毎週毎週子育て者は感謝します。この市で子育てをする幸せを噛み締め、市議会の支持率はうなぎのぼりとなり、市役所は市民の捧げる花束の香りに包まれて息苦しいくらいになることでしょう。みんなで市長を胴上げしたっていいです。知らないうちに育児手当の所得制限を引き上げても気が付かないくらいのものです。

 他にも「おむつゴミは一目見たらわかるので回収の人の余計な手間にはならない」とか「実施している自治体がけっこうあるのにウチだけやってないのは『子育て先進宣言都市』が聞いてあきれる」とか「はやく始めないと私の子供からおむつがとれて意味がなくなる」とかいろいろありますが、「おむつゴミ無料化」は、市にとっても悪い取り引きではないと、わかっていただけましたでしょうか。だめでしょうか。わかってくださいよ、たぶんここ数年のことなんだし。

 とと、上の一文を書いて思いましたが、そういえば今は「大人用紙おむつ」というものがあるのでした。介護の現場で使われているもので、たぶん私もそのうちにはお世話になりそうなアレです。乳幼児用紙おむつは今子育てをしているので私にとってそれなりに切実な問題ですが、大人用紙おむつのことは、まわりにたまたま使っている人がいないので、書いているあいだじゅう、気が付いていませんでした。考えてみれば、上のあれこれはぜんぶ大人用にも当てはまるのですよね。

 まったく、一事が万事、人は、自分の問題しか問題と認識しないものです。でんねんまんねん百万年です。だからほんとう、おむつの回収は、無料でやりましょうよ、やっていいじゃないですか。やらないなんて、今時どうなんですか。私は広く訴えたい。みなさまの良心に訴えたい。将来この子たちはあなたの年金を支えますから、せめておむつくらい無料で回収してやってくださいこれまでもそうだったんだしと。いや、正直「出すのは懐から手を出すのも嫌」というのも、ないって言うと嘘になるんですけどね〜。


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