第一話『変身!スピードマン』

 大阪侵攻を開始した獣人帝國バグーは、第一の刺客アリクイバグを大阪市此花区に上陸させる。「うおぉ、アリはどこじゃバグーアリ喰わせろバグー」とか言って暴れだすアリクイバグ。特に必然性はないがこのままではJR環状線西九条駅が危ない。急げ各務剛志。いやさスピードマン。万歩計の数字はまだ三千。電車の中でも走るのだ。

「アリだアリー。アリ食わせろバグー」
 アリへの渇望に我を忘れたアリクイバグは、目に付いたものを次々とたたき壊しながらJR環状線へと向かう。このままでは大阪の大動脈が危ない。
「待てっ、そこまでだアリクイバグっ」
 JRの自動改札から走ってきたあの男こそ、おお、我らがスピードマン。
「おまえ、なんだバグ。アリはどうしたバグー」
「スッピードっ・マァァン!参っ上。そのなりでアリが主食だなんてちゃんちゃらおかしいぜ。獣人帝國バグーの使徒め、お前は俺が倒す」
「やれるもんならやってみろバグー、げふっ」
 いつの間にかスピードマンの右手に現れた棒状の武器が、いきなりアリクイバグの肩口に炸裂した。
「な、なんだその武器はバグ。まてバグ、ぐふっ」
 問答無用で武器を振り下ろすスピードマン。その目は血に酔っている。
「ぐがっ、がっ、ぐぶっ」
 ぐったりと倒れたアリクイバグの身体の上にやっと、投げ出すように答えを告げるスピードマン。
「スーパーストリング・スクランブルブレード。覚えておけ。俺を遠くまで呼びだしたバグノイドは、こうなるのだ」
 説明しよう。スピードマン各務剛志はソフトウェア会社の中間管理職である。開発会議中に呼び出されて、地下鉄とJRを乗り継いでここまで来たため、非常に気が立っているのだ。
「……」
「なんだ。言いたいことがあったら、聞いてやろう」
 瀕死のアリクイバグの顔に、耳を近づけるスピードマン。アリクイバグの顔が、にやりと歪む。
「獣人帝國バンザイ、だバグー」
 瞬時にして紅蓮の炎に包まれるアリクイバグの身体。バグノイドは、官憲に捕まったときのために自爆装置を内蔵させられているのだ。大丈夫か、スピードマン。
「ふう」
 と、数メートル離れたところから爆発の炎を見ている、あれは、スピードマンではないか。
「スクィーズドスペース・ジャンプのおかげで助かったぜ。とにかく、これで此花区の平和は守られた。といっても過言ではない。じゃっ」
 いよいよ侵攻を開始した獣人帝國バグー。その巨大な野望をくじくまで、スピードマンは戦い続けなければならない。遠くに聞こえはじめたサイレンの音を背負って、JRの駅へと去ってゆくスピードマン。いつか大阪に平和が戻るその日まで、戦え、スピードマン。

<次回予告>
「やあ、みんな、スピードマンだ。僕の活躍を見てくれてありがとう。ちなみに、大阪ではみんなあんまりJRは使わないんだ。だからといってバグノイドに壊されてもいい、っていうわけじゃないけどね。さて次回は『グラウンドのスピードマン』。このSSSブレードがあるかぎり、豪速球を投げるバッファローバグなんて、敵じゃないと言っても過言ではない。じゃっ」


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