第二話『グラウンドのスピードマン』

 会社のソフトボール大会に出場した各務。しかし、獣人帝國バグーは、ここにも刺客を送り込んでいた。敵のピッチャーを密殺し、バグノイド「バッファローバグ」が入れ替わっていたのだ。しかも野手は全員戦闘員だ(ちなみに、黒づくめの下級戦闘員は「バグメイト」という名前だ)。度重なるラフプレイに各務のチームは崩壊寸前。そのとき、ついに各務の変身万歩計が一万を越える。

「おい、次の打者は誰だ。各務さんか。あれ、参ったなあ、各務課長、どこ行ったんだ」
「はっはっはっ」
「だ、だれだお前は」
「スッピードっ・マァァン!私が来たからにはもう安心だ。さあ、代打を出しなさい」
「どなたか存じませんが、よろしくお願いします」
「ようし、バッファローバグ、もうお前の好きにはさせないぞ。カモン、スーパーストリング・スクランブルブレードっ」
 まばゆい光輝とともに一瞬で現れたSSSブレードを構えて、バッターボックスに立つスピードマン。
「現れたなスピードマン。返り討ちにしてやるでバグ」
「この牛野郎、かかってこい。ステーキにしてやる。いや、お前だと牛丼が精いっぱいかな」
「なんだとバグ。牛丼を馬鹿にするのかバグっ」
 噛みあわない会話の後の緊張の一瞬、バッファローバグが大きく振りかぶって、投げた。風を巻く豪速球があやまたずスピードマンの頭を指して走る。
「うははは、これを脳天に喰らって、御陀仏だバグっ。ちなみにこれはモノローグだから時間は関係ないんだバグ」
 とにかく、危ない、スピードマン。
「な、なにいっ、だバグ」
 ボールは、バックネットにめりこんで、コンクリートを割って、止まっていた。
「おい、どっちを見ている」
 そして、スピードマンが、そこにいた。そう、これぞスクィーズドスペース・ジャンプ。我らのスピードマンに、いかに豪速球であろうとボールなんかが当たるものか。
「俺はっ、ここだああっ」
 解説しよう。SSジャンプは約7メートルの有効距離しかないため、マウンド上のバッファローバグのそばに直接跳躍することはできない。だからこそ、スピードマンは今ちょっと走っているのだ。
「喰らえ、バッファローバグ」
 パキーン。とても堅いSSSブレードの直撃を受けてバッファローバグの脳天がへこみ、サングラスが割れる。
「ぐ、ぐはあバグ。バ、バグエンペラー万歳」
 自爆するバッファローバグ。逃げてゆくバグメイトたち。各務のチームはもう大喝采だ。
「ふっ、焼き肉になりやがったぜ」
「ありがとうございます。ありがとう」
「とにかく、これでソフトボールの平和は守られたと言っても過言ではない。じゃっ」
 万歳の声に送られて去ってゆくスピードマン。しかし、獣人帝國バグーがあるかぎり、スピードマンの戦いは終わらない。走れ、スピードマン。戦え、スピードマン。

<次回予告>
「やあ、みんな、スピードマンだ。今週のスピードマンはどうだったかな。ちなみにソフトボールでは上から投げると反則だ。君たちはマネしちゃいけないぞ。さて次回は『海遊館のスピードマン』。恐るべき巨体を持ったホエールバグが海からやって来る。そして、いよいよ私の娘が登場。だと言っても過言ではない。じゃっ」


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