第一三話『スピードマン、その戦いの軌跡』

 統一政府認可番号21054422。星域コード名001225-02-03。地球日本本州02。駐留資格コード006624335、ポレポレ記録。10224年次(現地時間平成12年1月2日)「SSSスピードマン」計画報告書。

 前年次報告書において予告の通り、当初の予定よりも22年(現地時間)遅れて本年度「獣人帝國バグー」の侵攻は開始された。当該駐留員ポレポレによって準備された現地人戦闘員(各務剛志)による迎撃戦闘は10223年次報告書における第21修正予定表に基づいて実行され、第21修正予定表からの逸脱はブレンダ指数で2.1と、完全に予想範囲内に留まっている。現在までのところ、ほぼ滞りなく計画通り遂行されている状態であると言える。10176年次報告書、および10153年提出の全般計画書からの逸脱度は、それぞれ17.2、30.1であり、特に後者のブレンダ指数に関しては51ヶ年の計画期間に対する指数としては非常に低く、高い評価が求められる。本年次報告は、主要な内容として計画実働から現在までの、計画進行状況に関する中間報告と、今後の展望を記録するものである。そのため、計画の詳細についての再収録は行わない。特に計画目的に関しては全般計画書および10201年次報告書に含まれる修正計画書を参照されたい。

 添付映像情報1。
「アリだアリー。アリ食わせろバグー」
 獣人帝國バグーの尖兵として現れた第一の刺客である、アリクイバグである。遺伝子改造技術の現地人への供与の結果として生み出された「バグノイド」と本計画における主要戦闘ユニットである「スピードマン」の戦闘が行われた。
「スーパーストリング・スクランブルブレード。覚えておけ。俺を遠くまで呼びだしたバグノイドは、こうなるのだ」
 スピードマンの能力は現段階で完全にバグノイドのそれを凌駕している。特に再度解説するならば、供与した超ひも応用技術である「SSSブレード」は、現時点での地球日本本州(獣人帝國バグーを含めてさえ)における技術レベルに比較して完全なオーパーツ的存在であり、対抗手段は存在しない。

 添付映像情報2。
「なんだとバグ。牛丼を馬鹿にするのかバグっ」
 最初の戦闘において技術レベルの格差を認識した獣人帝國バグーの選択は、第21修正予定表におけるオプションC−2、バグノイドの個別投入による実戦での技術洗練およびスピードマンへの圧力維持であった。次の刺客、バッファローバグは、スピードマン各務剛志の勤務する「ワタナベクリエイト」の社内ソフトボール大会に侵入した。
「ふっ、焼き肉になりやがったぜ」
 バグノイドとスピードマンの、一対一戦闘という、一見非効率なパターンが、これで確定したと言える。

 添付映像情報3。
「すううううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぴいいいいいいいいいいいいい」
 ホエールバグである。得た技術を総花的に投入し、実効的な使用法を調査するという方針が存在することがわかる。
「既に長くなっていることだし」
 もちろん、スピードマンにとってこのホエールバグが「巨大だが軟弱な敵」以上の意味をもつわけではないが、戦線への圧力を継続するという意味が常に存在するのである。このホエールバグなど、その意味のみが存在する敵であるとさえ言える。

 添付映像情報4。
「おまえらあっ。カニをバカにすると承知しないバグよっ」
 カニバグについてはややイレギュラー的な存在であることを否定できない(ブレンダ指数で0.3)。精神的インプリントの失敗から、スピードマンではなく地球人に対して主に攻撃力が発揮されるという事態に陥ったからである。
「ぜいっ。だから。ぜひっ。ごほん。ごほ。ぐほ。なにを。はあっ。言ってるんだ」
 スピードマンの行動に関しては顕著な逸脱行為は見られないものの、これが計画にとっての「ベストについた小さな染み」の一つであることを、当該駐留員ポレポレは否定するものではない。

 添付映像情報5。
「別になにもしていないバグよ。強いて言えば人生について考えているバグ」
 ハエトリソウバグに対しては、戦線維持に関する動機づけについて、スピードマンに対する多少の行動指示による調整が必要であった。
「こうするさ」
 続けてクラゲバグについて、
 添付映像情報6。
「なにを言っているのかしら。よくわからないバグねえ」
 この事件に関しても同様であるが、前回の反省からやや動機づけレベルを上げている。
「オレはっ、VAIOユーザーなんだあっ」
 ここまでの逸脱度は0.4に留まった。

 添付映像情報7。
「ここはちょっと人質をとって立てこもるにはオープンすぎる場所だったかもだバグ」
 ゾウガメバグである。本年度における最大のブレンダ指数逸脱度(1.4)を示す一連の事件の発端となったこのバグノイドは、公共施設における民間人を巻き込んだ作戦を行うことによって、計画全体を危機に陥れた。自爆により証拠が消滅したとはいえ、現地警察との戦闘の事実への対応について、複数の現地当局(添付情報B−1参照)に対する「要請」の必要があった。
「阪急百貨店の平和は、守られているみたい、だなあ。帰るか」
 特に、マイナーな問題ではあるが、スピードマンの自由意志に関するある種の問題(士気のような)が生じたことも無視できない。
(添付映像情報なし)
 続いての戦闘に関しては、協定に基づき、本報告書に添付することが可能な映像情報は存在しない。疑似バグノイドである「モスバグ」を用いた統一政府間協約第12条6項に基づく修正が行われ、計画は旧に復した。

 添付映像情報10。
「だ、だれがバグノイドバグか、ってあれ」
 レッドスネークバグに関しては「セルダン危機」が終了して後の最初のバグノイドとして、特に事前計画(添付情報C−10)の堅持が必要であった。
「火災報知器が作動していたのは、好都合だったな」
 戦闘は最低限の逸脱度を維持しつつ、行われたと言える。続いての、ややマイナーなバグノイドである、レオポンバグに関しても同様である。
 添付映像情報11。
「オレの活躍はどうなるバグか」
 特に今後の戦闘において、獣人帝國バグーの「スピードマンとの戦闘」への集中的な注力を行うとの予想が立てられており、レオポンバグに関してはこの予想に沿った迎撃計画が立てられたことを追記しておきたい。
「レオポンって、一代雑種だから、子供はできないんだよなあ」
 戦闘の結果は、それを裏付けるものであった。

 添付映像情報12。
「さあ、いい子にはプレゼントバグ」
 トナカイバグに関しては、特筆すべき事項はない。獣人帝國バグーの技術レベルでは、このタイプのバグノイドには、コストに見合う成果は得られないからである。
「子供たちも、今晩を楽しみにな。さあ、ゆくぞトナカイ」
 スピードマンの士気に関しても、後半に向かう一つの息抜き的な存在になったのではないだろうか。

 添付映像情報13。
「ち、違うバグよ。ゲイツバグだバグ」
 ゲイツバグに関しては、萌芽的なものではあるが、ある種の逸脱を示す兆候が見られる。詳しい分析は次年次の報告にて行う。
「二千年問題って、怖いなあ」
 ただし、本計画に関しては、この事件の逸脱度は0.1程度に留まっている。

 以上である。今後、計画期間全域に渡って監視を強化し、第21修正計画書に基づく計画の完了にむけて努力を行いたいと、当該駐留員は決意を新たにしている。計画完了は、本年度第1四半期(現地時間2000年4月)の予定である。

<次回予告>
「やあ、みんな、スピードマンだ。前回ここで『要するに総集篇だ』なんて口走ったお陰で今回はえらい苦労したよ。文章の継ぎはぎって、一から書くより大変なんだ。ちなみに今回は読まなくっても今後のストーリーにはあんまり影響はないぞ。そんなところも総集篇らしいよね。さて次回は『梅田スカイビル空中庭園展望台のスピードマン』。著作権上非常にヤバいバグノイドの登場だ。要するにペットがメールでアレするナニだと言っても過言ではない。じゃっ」


目次に戻る> <第一四話