●くだらないことを言うようだが、「鉄腕アトム」を現実につくるために解決しなければならない、技術的な最大の問題点は、人工知能でも内蔵原子炉でもなく「頭部髪様突起物の三次元化」であるかもしれない。
●「アトム」という語は卑語で「おなら」の意味があって、そのままの名前では海外に紹介できなかったそうである。つまりatmosphere(大気)の省略形らしいのだが、そうすると、原子炉(atomic reactor)は「おなら反応炉」、原子爆弾(atomic bomb)は「おなら爆弾」、原子物理学(atomic physics)には「おなら物理」という語感があるのだろうか。どうもビクビクしすぎな気がする。日本ではスーパーマンに「大型食品小売店マン」、スパイダーマンに「スパイだ」、バットマンに「打者」という意味があるが、気にせず直輸入されているではないか。
●最近の、選挙の候補者のポスターで「ストップ・ザ・天下り」というキャッチフレーズを見かけた。地方都市の市長の権限でこの公約がどれだけ実行できるか、はともかくとして、正しくは「ストップ・ジ・天下り」だろう。「ストップ・ザ・飲酒運転」「ザ・インターネット」というのも見たことがある。「ザ・ウルトラマン」はともかく、洋画の日本語タイトルは「ジ」でないと恥ずかしい気がする。
●映画「ゴジラ」の劇中世界においては「ゴジラが過去幾度か日本を襲っている」ほかに、もう一つ重要な現実世界との違いがある。それは「怪獣映画が存在しない」ということである。あったとしても、おそらくそれは我々にとっての戦争映画なり、公害映画に似た社会的扱いを受けるはずだ。ウルトラマンも戦隊ものも巨大ロボットもの(マジンガーZ等)もおそらく初めから作られないが、そういう文化を持つ「日本」は、もはや我々の日本とはだいぶ違った国になっていると思う。
●元巨人の松井選手が「ゴジラ」シリーズに野球選手の役で出演したと聞いたことがあるのだが、この場合、松井選手の劇中でのあだ名は何になっていたのか。軽々しく「ゴジラ」とは呼べない気がするのだ。というのも、ゴジラにとって大きな被害を受けた国においては、この怪獣の名前は「サリン」や「SARS」に似た意味があるはずなのだ。少なくとも、そんなあだ名をつけようものなら、劇中世界における「ゴジラ被害者遺族の会」が黙ってはいない気がする。
●大リーグのマリナーズとヤンキースが対戦することを、テレビ等が「イチローと松井が対決」と表現することについて、チーム同士は対決しているかもしれないが、この二人(両方とも外野手)はまなじりを決して実際に対決するわけではない(ピッチャーとバッターのようには対戦しない)、これではまるで乱闘しているみたいで変だ、という意見を新聞で見た。
私もなんとなく同感ではあるのだけれども、しかし深く考えてみると、打席にいる松井が「ヒットを打つぞ」と思っていて、ライトを守るイチローが「絶対捕るぞ」と思っていたら、これは対決と言えるのではないか。バレーボールで相手のサーブやアタックをレシーブする程度には、立派にまなじりを決している感じもする。
●テレビなどの天気予報で「最高気温は平年並み」という、この「平年」とは、過去何年かのこの季節の平均最高気温だと思うのだが、この平均には「天候」は考慮されているのだろうか。
一般に、晴れると最高気温は高くなり、雨だと最高気温は低くなる。これらはいわば別ものなので、平均することはあまり意味がない。天気予報において知りたいのは、厳密には「今日の晴れは、一般の年のこの季節の『晴れ』と比べてどれくらい暑くなるか」であり、雨との平均を比べてもしかたがないのである。少なくとも、ある晴れた一日の最高気温が平年より高くなるのは普通のことで、地球温暖化の兆候を表しているのではない。平均身長や平均体重を男女一緒くたに出すようなものかもしれない。
●性差別、性的役割の押し付けといった諸問題をとりあえずおくとして、仮に情報理論の観点だけから考えることができるならば、たとえば「弁護士」に対して「女性弁護士」のように、女性の場合だけ「女性」とつけて書くことは、理にかなっている。「男性弁護士」「女性弁護士」といちいち書かなくても「省略されているときの性はこちら」という取り決めがあればどちらかは省略できるし、その場合、数の多いほうを省略するのが効率がよいからである。今のところ、男性に比べて女性弁護士の数は十分の一くらいらしい。
●したがって「看護師」の場合はまず「女性看護師」と考えるべきである。
●記憶すべき情報をできるだけ圧縮するという観点からは、近所のおじさんを「ふみかちゃんのパパ」等と呼ぶことは理にかなっている。
●GPS(衛星を利用した位置情報システム)が普及しているので、住所はもうすべて緯度経度で表すようにするべきではないか。一家に一台、ピザ屋の配達バイクにも一台ずつGPSが備わるようになれば、ややこしい道案内も最新の住宅地図も不要で、座標を指定すれば届くようになるのだ。ちなみに、日本近辺では緯度1度が111キロメートル、経度1度が91キロメートルに相当するので、0.1秒の位まで書けば住所は誤差3メートル程度で確定する。この場合「度分秒」が二組必要なので、小数点以下一位までを数字で書くと一五桁の数字が必要で、冗長にすぎる(また、書き間違いなどのエラーに弱い)のだが、市町村の合併などの限定された局面においては、かなり有効だと思う。少なくとも「番地」は緯度経度で振るようにすればどうか。住所を数字で扱えるのは、ずいぶん楽だ。
●と思ったが、マンションの場合は階数も必要である。
●と思ったが、GPSには理論上高さ測定機能もある…と思う。
●「川の長さ」を測定する場合、川の形というものはなにしろフラクタルなので、測定する定規の長さで上下する。ディバイダ(両足が針になっているコンパスのような道具)を当てて測定するような場合、測定するディバイダの開きを小さくしてゆくと、小さなでこぼこがどんどん測定に入ってきて、大まかに測定したときよりずっと長くなってしまうのである。そこで川の長さを決めるときは「ある縮尺の地図で測定する」という決まりがあるのだそうだ。ずいぶん恣意的である。
●ここで問題。直線の反対が曲線、有理数の反対が無理数とするとき、フラクタルの反対は何か(答;フラクタらない)。
●問題。上の設問の評価を十字以内で表せ(答の一例;フラクダらない(七字))。