「おふろではたふりワンワン」レビュー

 何から説明していいやら難しいのだが、「おふろではたふりワンワン」というのは、パイロットインキ(株)が販売している幼児用のおもちゃである。モチーフにしている「ワンワン」というのは、ここでは犬を指す幼児語ではなく、NHK教育の「いないいないばあっ!」という番組に登場するキャラクターの固有名詞である。かつて「おかあさんといっしょ」を見ていた人は少なくないと思うが、「いないいないばあっ!」はそれよりもう一段低年齢向けに作ってある番組で、主として「洗濯したり晩御飯の準備をしている間子供の注意を引く」という意味で強烈な力を発揮してくれるありがたい時間に放映している。

 というわけで、今回はいつもと趣向を変えて、このおもちゃのレビューをお送りしたい。ちょっと画像が多くなるのだが、画像がないと面白くない、今回はそういう回なので、画像を閲覧できない環境でご覧の方におかれましてはお許し下さい。

 これが「おふろではたふりワンワン」である。写真では撮影のためテーブルの上に置いてあるが、本来はこれをお風呂の、湯船に挟み込んで固定して使う。お風呂に入るのが楽しくなる、というふれこみなのだが、これを買って以来、本当に、マジで、私の娘は風呂に入りたくてはいりたくてしようがなくなった。効果絶大である。

 お風呂だということもあり、おそらく、全体的に船をモチーフにしているのだと思う。前面にあるハンドルは船の舵輪だし、上にこしかけているワンワンが持っているのは手旗信号の旗だ。ハンドルを回すと、ワンワンがこの旗を振る。なお、ハンドルの中央には「クラクションのボタン」があるのだが、本物の舵輪にはたぶんこういうものはついていないと思う。私の娘は気に入っているので、どうでもいいといえばいいのだが。

 船と自動車が混ざっているところはほかにもある。舵輪の右側にあるのは「鍵穴」なのだ。オレンジ色の鍵がひもにつながる形で付属していて、ここを操作するようにできている。

 差し込んで、回すとどうなるかというと、

 こうなる。うーたん、というのがここに描かれたキャラクターの名前だが、このうーたんがバネ仕掛けでぴょん、と飛び出してくるのだ。勢いがいいので、かなりウケる。うれしい。

 さて、実は以上は前置きである。左の写真を見ればおわかりのように、では、左側になにがついているかというと「大砲」なのである。砲だ。しかも、なにやら装甲されている。球形の砲塔なのだ。旋回もする。おおっ、これは凄いじゃないか。ここは当然のように水鉄砲になっていて、後ろの水タンクに水があるかぎり、レバーを押し引きすることで水を飛ばすことができるのだ。結構勢いがある。

 ちなみに回転角は三六〇度あるので、押した自分が水鉄砲を喰らうこともある(仰角は変えられない)。角度によってはワンワンにも当たる。

 しかし、うひゃうひゃ言って喜んで遊んでいる娘に比べ、邪悪な大人である私は、ふとここで、疑問を禁じ得ないのである。ワンワンが乗っているのは、船はフネでも、軍艦ではないのかと。軍艦と書いてフネと読むのではないかと。いや、そうであっていけないはずがあろうか。ワンワンって、水兵さんっぽいのは確かなのだ(水兵さんの帽子をかぶっているイラストを確か見たことがある)。ワンワン一等水兵。国家のハンペイであります。

 そう思って見ると、なんだかいろいろなことを考えてしまう。上は付属のスコップで、水タンクにお湯を補給するのに使う、というものである。が、ここでこういうことをしてみようじゃないか。

 なんだかもうヘルメットである。狙ったのではないと思うが、サイズがぴったりで非常におさまりがいい。手旗信号を送っているというよりも「弾着観測をしている」ようにも見える。初弾ハ遠弾。下ゲ三ツ、撃ッ。

 そして、そう思って見ると、うーたんのところも、なんだか「ターゲットスコープ」に見えてくるのである。軍艦に鍵というと「核兵装」などという単語が胸に去来するが、まあその、そんな感じのアレだ。

 娘を風呂に入れて、洗って、たっぷり遊ばせて、妻に迎えにきてもらった後、一人風呂で、ワンワンにヘルメットをかぶせ「初弾命中。効力射願います」などとやっていると、ここだけの話、非常に楽しい。おふろではたふりワンワン。そんな皆様にお勧めしたいおもちゃである。


※えー、メーカーにはそういう意図はないと思います。ねんのため。
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