よかったねトリノ

 来年読み返してどうかは別にして、今週の話題といえばトリノオリンピック、トリノオリンピックといえば荒川静香、荒川静香といえばイナバウアーである。

「イナバウアー」というのはもともとイナ・バウアーさん、という人からきた人名(しかもフルネーム)だそうだが、実は、そのことをさっきNHKで知るまで、私は「昔イナバさんという人が発明したのでこう呼ばれるのではないか」という推測を周囲に公言していた。口幅ったいことを言うようだが、あえて言うならば稲葉説は当たらずとも遠からずであり、人間長く生きているとだんだんこういうカンが冴えてくるものではないかと思った。

 バウアーといえばメスバウアーである。メスバウアーというのも人名で、調べたらやはりドイツの人の名前だった。もしかして知らない人が多いと思うので解説しておくと「メスバウアー効果」というものがあって、これは原子核が出したガンマ線を他の原子核が共鳴して吸収するというものである。高精度で原子核の準位間のエネルギーを測定できるので、磁気モーメントや四重極モーメントの精密測定ができる。

 何が言いたいのか。いや原子核はどうでもよいのだ。なんか、日本語くさい、ということが言いたいのである。ドイツ語というのは、よく知らないのだが、もしかして日本語と非常によく似ているのではないか。文法など、言語として似ているわけではないのだろうが、発音に使う音素のようなものが、日本語と共通するところが多く、だからイナバとかメスとかそういう日本語っぽい人名が出てくるのではないかと思うのである。

 そういえば、有名なスケベニンゲン、これはお隣オランダの地名らしいが、ドイツの地名だって妙に親しみ深いものがあったりする。ええと、ゾーリンゲンとか。昔、大学にいたときに、自分の属する研究室と似た研究をしているドイツの研究者でアッカーマンという人がいて、その人の部下(学生?)でイッターマンという人もいて、もう少しでヤッターマンが出てきそうだと研究室で大騒ぎになったこともあった。実に議論が強引になってきたし、ヤッターマンは果たして日本語かという問題もあるが、とにかくドイツと日本はかように縁が深い。

 そう思って考えると、バウアーで他に有名なのはベッケンバウアーだが、ベッケンもいかにも日本語くさい。むしろイナバとかメスにはない、何とも言えない迫力があって、九州あたりに多い気がするのだ。べっけんほんなこつそう思わんとか。

 ところで、ばってんといえばばってん荒川だが、荒川といえば荒川静香であり、荒川静香と言えばイナバウアーであるので、こうして円環は閉じ、バウアーは世界を統べる。ありがとうトリノ。金メダル嬉しいね。


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