今夜はあっぱれ勝ったのでマクラとしては不適切になってしまった気もするが、今年の阪神タイガースに関してはもう私も何も書かないので、もうそっとしておいて欲しいと思う。その上でへんなことを書くのだが、野球選手たるもの、シーズン前の目標について、どのへんに置くべきだろうか。
いやしくもプロの野球選手であるならば、個人としての目標は一軍でケガもなく、野手ならフルイニング出場、投手ならローテーションを守り抜いて、さまざまなタイトルを獲得しつつ、チームとしては日本シリーズを制して日本一、ということになると思う。それしかないと思うのだが、この「志」を述べることが許されるのは、けっこう、一握りの選手ではないかと思うのである。
許されるとはどういうことか、お前はいつからそんな偉ろなったんや、と中学校のときの先生に叱られそうだが、まあ待たれい。待ってえな。たとえば、チームの優勝云々を語る場合、その人が最低限、一軍の選手でないと、ちょっと珍妙な意見表明ということにはならないだろうか。つまり「その選手が頑張ればチームが優勝する」という立場でないといけない気がするのだ。その選手が、次のレギュラー候補と言われつつも、なかなか一軍定着できないくらいの選手である場合、この選手が打ち破るべきは、やはりまず自チーム一軍のレギュラー陣である。そういう選手は目標として「一軍で一試合でも多くプレイすること」あたりを挙げてほしいと思う。そのほうが美しいと思うのだ。
美しいとはどういうことか、お前はいつからそんな偉ろなったんや、と高校のときの先生に叱られそうだが、似たことは一軍の選手が掲げる目標についても言える。これは本当に、どういうわけか、誰か言ってやらんといかんような気がしてならなかったのだが、ときどき、シーズン前なんかのテレビのインタビューに答えて「目標は日本一です」と答える選手がいるのだ。
いたっていいではないか。お前はいつから。ああいや、そうなのだが、そのチームが、去年日本シリーズで負けたとか、リーグ優勝をほんの惜しいところで逃した、という状態ならまだいい。問題は、前年度に悲しくも最下位だったとか、そういう場合だ。こういうときにいったい選手は「Ａクラス入り」もましてや「リーグ優勝」もすっとばして、いきなり「日本シリーズ」と言っていいものか。
このあたり、実は今年から「クライマックスシリーズ」という、よく考えると本当にこれでよかったのかというネーミングのポストシーズンゲームが組まれ、リーグ優勝すなわち日本シリーズ出場、ということではなくなっているのだが、いやもう、私は最近までこのことを知らずどうしてこんな重要なことを私に黙って決めるのかと不思議でならなかったのだが、とにかく前年度最下位あたりのチームの目標としては、現在ではこの「クラマス出場」というあたりがいいのではないかと思う。クラマスとは、クライマックスシリーズの略である。クライマックスシリーズという言葉の私への普及のために今私が考えた。
以上はどこをとっても余計なお世話であるが、要するに、目標というものは、高くてもいけないし、低くてもいけない。ちょうどいい目標を掲げるのはなかなか難しい、ということだと思う。いや、今年の目標は、と聞かれて「一年息災に野球を楽しんで、その結果来年も野球界で禄を食めたらそれでいいです」というのも一つの答え方として、とはいえどうも、やっぱりプロとしてはそれではいけない気がするのだ。有言実行というのは今や日本語変換プログラムにも入っているくらいの言葉だが、実現がちょっと難しいくらいの目標を公言してそれを実際に実現してのける。プロとしてそこにみんなはシビれるのであり憧れるのではないか。そうちゃうか大西君。わかったらええわ。
さて、以上のようなことを考えたのは、最近このような噂を聞いたからである。いわきというところがある。福島という県は大きく三つに分けられて西から東（内陸から太平洋）に向かって会津地方、中通り、浜通りと呼ばれている。その浜通り、海に面した土地だ。「フラガール」という映画で一躍脚光を浴びたスパリゾートハワイアンズという温泉テーマパークがあるが、それがなくても、一年を通じて比較的温暖で、過ごしやすい場所である（海沿いなので冷え込みが厳しくないらしい）。
それはいい。素晴らしいことだ。そして上のテーマパークの「ここはハワイである」という宣言は、目標の立て方として実はかなりよかったのではないかと思う。最初はそんな馬鹿なとか、じゃあおれの目標は日本シリーズ優勝だ、とか言われていたに違いないが、今行くとけっこうまじめにハワイである。まあそう思われたい。ここで問題にしたいのは、もう一つの異名である。
「東北の湘南」
これだ。福島県の浜通りから宮城県にかけての海岸が本当にそう呼ばれているらしいので、嘘だと思ったらぜひグーグルあたりで検索をかけていただきたい。東北にあって、湘南のような過ごしやすい土地である、ということだと思うのだが。
自分の故郷でもない、自分が住んでいるわけでもない土地にあまり厳しいことは言わない方がいい。しかし、あえて思う。ちょっと、志としては低いような気がする。