スーパーストリング・スクランブルブレード

 スーパーストリング・スクランブルブレード(SSSブレード)は、スピードマンの主戦兵器だ。スピードマンの体内のナノマシンがつくる超ひも場によって周辺の物質から1プランク時間単位で生成されるSSSブレードは、基本的に永久不滅のおそるべき鈍器である。

 異星科学によれば、万物の根幹はヒモである。両端に仮想的な物質を生成する「ひも」は、そのねじれによって電荷やスピンといった性質を素粒子に与えつつ、あるいは生成し、あるいは両端を対消滅させる。SSSブレードは、この原理を応用し、自由に空気中の素粒子群を相転移させることによって作られる、一個の素粒子なのである。したがって、SSSブレードは、その反粒子と出会わない限り、決して破壊されない究極の物質なのだ。残念ながらその姿は鋭い剣というよりは特徴の無い棒だが、出会った物質を全てエネルギーとより単純な素粒子に変換しつつ、全てを破壊する。

 SSSブレードは、生成時に同時に作られる反SSSブレード(これは、超ひも場が作り出す仮想的マイクロブラックホールによって生成と同時に虚数世界への転移を行うため、目には見えない)を再転移によって呼び戻すことによって、スピードマンがそう望んだときのみ、消滅させることができる。敵に奪われたとしても、反SSSブレードを維持している超ひも場の有効範囲外(約七メートル)から外に出ると自律的に再転移をするため、使用されることはない。

 SSSブレードは、第一五話で見せたように、敵に投げつけて使うこともできるのだが、この場合、再度SSSブレードを生成しなければならない。これは各務の体内のATPをエネルギー源としているナノマシンに、過大な負担を強いることになり、ひいては各務の健康に大きなダメージを与えることになる。最悪の場合、酸欠、貧血状態になり、各務は意識を失ってしまう危険もあるのだ。また、同様の理由で二刀流のような使用法は事実上不可能である(二本分の超ひも場を生成できるだけの体力が各務にはない)。実は作り出したSSSブレードを維持しているだけで超ひも場漏洩分のエネルギーが各務への負担として生じているのだが、これは生成時のエネルギー消費に比べれば、わずかなものである。


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